煎茶道 文化

そして、お茶は消えてしまった

 お茶ようございます♪

 皆様、お茶を飲んでいらっしゃいますでしょうか?

 日本には「日常茶飯事」や「お茶の子さいさい」、「茶々を入れる」などとお茶にまつわる言葉があるほど、お茶は日本人の生活にとってなくてはならないものとしてあり続けてきました。
 今でもお茶はスーパーやコンビニ、または街のお茶屋さんで手軽にお買い求めできますが、昔ほどお茶は世の中で重要な役割を果たさなくなってきました。

 今回は、コーヒーを飲むことを「お茶をする」と言ってしまうほどお茶が大好きな日本人にとって、お茶の存在がどのように変わってきたのかを私見たっぷりでお話ししてみようと思います。

もともと家で飲むもの

 今からおよそ1200年前に中国から日本に伝わって以来、お茶は長らく家で飲む飲み物でした。
各家庭には、茶装具や茶だんす(今では死後)があり、お茶が毎日の習慣として飲まれていました。
 家族が集まってお茶の飲んでのんびりする部屋はお茶の間と呼ばれ、お客さんが来ればお茶を出してもてなしました。抹茶を普段から飲む方は今も昔も多くはありませんが、煎茶やほうじ茶、番茶の茶葉は生活の必需品でした。

 そのためお茶の農家さんは日本国民のお茶需要に応えるべく茶葉栽培に精を出し、作れば作った分だけ売れるという時代が続いてきました。
 もちろんお茶を飲むのに必要なのは茶葉だけではありません。急須や茶碗などの茶器も必要です。陶磁器製の茶器は壊れやすく、デザインの流行り廃りもあり新たな需要は途切れることがなく、茶道具を扱うお店も40~50年前までは繁盛していたそうです。

 今では性別の差別だと言われてしまいそうな「嫁入り前の準備」として茶道が若い女性の嗜みの一つであったこともお茶需要を後押ししたのかもしれません。
 何はともあれ、お茶は長い時間をかけて日本人の生活の一部として確固とした地位を築き、いつしかあって当たり前の物になっていきました。

持ち運べるお茶の登場

伊藤園「お〜いお茶」ふるさとチョイスより

 今からおよそ40年前の1980年、お茶の歴史の大転換となった出来事が起こります。缶入りのお茶の登場です。
 「お〜いお茶」で有名な伊藤園が、清涼飲料水やコーヒーなどに対抗するべく、その威信をかけて初めての「持ち運べるお茶」缶入り烏龍茶を発売します。
 烏龍茶の缶入り販売に成功した伊藤園はその5年後の1985年、缶入りの煎茶の販売にこぎつけます。

1985年に販売を開始した缶入り煎茶「お〜いお茶」伊藤園より

1990年代に入ると缶よりも使い勝手の良いペットボトルが普及し、その流れで各日本茶メーカーはペットボトル入りの煎茶の販売を続々と開始しました。
 こうしてかつては自宅や勤め先、出先のお店いづれの場所でも「座って飲む飲み物」であったお茶は新幹線にも持ち込んで飲める飲み物となり、その圧倒的な便利さと引き換えに大切な文化を失っていきました...

美味しいお茶はどこで飲める?

 さて、ここで思い浮かべてほしいのですが美味しい日本茶を飲むとしたらどこですか?
 この質問に対して答えに詰まってしまう方は少なくないかもしれません。そうなんです。

美味しいお茶を飲める場所ってすごく少ないんです

 なぜこのような世の中になってしまったのでしょうか?ちょっと考えてみましょう。まず、美味しい日本茶を飲むためには良質な茶葉と急須などの茶器が必要です。
 しかし、ペットボトルのお茶が溢れかえり、昔と比べて物事の進むスピードが格段に速くなってしまった現代社会においてはゆっくりお茶を煎れるという習慣は真っ先に切り捨てられてしまいました。そのことによってお茶を煎れるために必要な道具が家庭から消えていきました。
 引き立てのコーヒーが楽しめるようにコーヒー豆は常備しているけれど、茶葉と急須はありません。「茶の間ってリビングのことですか?」という方も少なからずいらっしゃるでしょう。
 ということで家庭では美味しいお茶を頂ける機会はかなり減りました。

 ではペットボトルのお茶の味はどうでしょう?
 ペットボトルのお茶は家を出て10分もあれば手に入れることができますが、その味が最高のものではないことは誰もが知っています。ペットボトルのお茶を販売しているお茶メーカーのCMでも急須で煎れたてのような味と表現することからも、劣化した味のものをなんとか飲めるよう工夫して売っていますというメッセージが読み取れます。

 それでは、美味しい日本茶を飲める喫茶店はあるでしょうか?街を歩く際に、日本茶を提供しているカフェを探してみてください。おそらくほとんどないはずです。万が一すぐに見つけることができたのならあなたはとても貴重な環境にお住まいということになります。

美味しさに触れなければ求められない

 寿司はカリフォルニアロールしかを食べたことのない人に、えんがわの美味しさを伝えようとしても、なかなか伝わらないのと同じように、美味しい日本茶を味わったことのない人に日本茶の素晴らしさを伝えようとしても土台無理な話です。


 幸いなことに、良質な茶葉と茶器を販売するお茶屋さんは今も日本全国に軒を連ねており、ペットボトルのお茶によって、様々な場面でお茶を飲むという習慣は日本に息づいています。
 日本茶にとって今必要なことは素敵な空間で煎れたての日本茶を提供するお店だと思います。急須を持っていない人に急須を買った方がいいよと、本物のお茶を飲んでもらう前に勧めるよりも、一度のそ味を体験してからお勧めする方が効果があることは明らかです。

 その体験を提供する場所がまだ少ないから、僕は日本茶カフェを開くことにしました。

お店を開くのは宮城県仙台市の予定です。お茶の産地ではない仙台で開業を目指すのは、僕が長らく生活し、煎茶道を学んでいるからです。
 飲食店を経営した経験はありませんので、先輩方のご意見を参考にしながら来年2023年末の開業に向けて準備を進めていきたいと思います。
 進捗状況はこのブログで逐一報告致します。

温かい目でご支援いただけますと幸いです。最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございました。

それではまた〜

 

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